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保育業界でご活躍の先生のコラムを毎月1回更新中☆ 平成25年度コラム 田倉輝子先生
            
1月「卒園生から学ぶ」
卒園生から学ぶ

 新年明けましておめでとうございます。
この一年が皆様にとりまして幸多き年でありますよう心よりお祈り申し上げます。

 元旦に届く年賀状のなかに教え子からの直筆の賀状があります。毎年、手元に届くのを楽しみにしていますが卒園後ずっとお母さんが一年に一回、年の初めに年賀状に寄せて我が子の近況報告を書いてくださっていましたが、いつの日か子ども達が直筆で書いてくれるようになりました。子ども達がそれぞれに成長していることをうれしく思っています。
この子ども達は保育園時代に専門機関から発達障害の告知を受けています。

2014年の年賀状から
12歳M子さん・母「田倉先生お元気ですか。M子もいよいよ4月から中学生になります。お陰様でこんなに大きくなりました」写真入りの年賀状です。

12歳H君「中学では陸上部でがんばっています」直筆

16歳T君「明けましておめでとうございます。高二になります」直筆
T君・母「お元気でお過ごしでしょうか。Tは自力登校を始め、私にも自由な時間が少し増えました」

18歳K君・母「Kは本人の希望もあって大学に進学することになりました。心配はつきませんが応援するのみです」

18歳Y君「お元気ですか?ぼくは4月から社会人になります」直筆
Y君・母「あっという間に高校卒業。4月から社会に出ていきます。いろいろ問題・心配事はつきませんが親としてしっかり見守りながら、親子共々頑張りたいと思っています」

18歳S君「受験勉強頑張ります。夢が実現するよう努力します」直筆
昨年の年賀状には、夢を実現するための意気込みが書いてありましたが元旦の郵便物には頑張るS君の年賀状はありませんでした。

22歳S君・母「ご無沙汰しております。Sも元気に作業所に通っています」
S君は作業所に通い始めて4年になります。

22歳M君「お元気ですか」直筆
一言ですがしっかりとした文字で書いてくれるM君の几帳面さが伝わってきます。

 告知を受けた頃の子供たちの様子は、生活リズムが整わない、眠りが浅い、食べない、極度の偏食、身辺自立が身につかない、多動で手を離すと何処へ行ってしまうか分からない、かんしゃくが激しくなかなかおさまらない、ことばの理解がよくなくて言い聞かせが通じない等、保護者にとりまして育児の苦労は並大抵のことではなかったことと思います。

 その苦労から育児を負担に感じ親としての自信をなくしかけてしまったこともあったことでしょう。
発達につまずきをもつ子どもへの支援は、その家族への支援と切り離して行うことはできません。障害受容の過程を理解するだけではなく家族支援の両方が必要となります。
家族支援は親を中心としてきょうだい、祖父母などの対象も含んでいますが私は、今まできょうだいの障害を兄弟姉妹がどのように受け止めているのかについて焦点をあてて考えてみることはありませんでした。ところが昨年の11月に卒園生(ダウン症の妹がいます)が保育実習にきてくれたことをきっかけに本人の了承を得て卒園生から学び得たきょうだいに障害があると分かった時の兄弟姉妹の思いをみなさんと一緒に考えてみたいと思います。

 卒園生のHさんは昨年、保育専門学校に入学しました。
お母さんからは、かねがねHさんが保育士を希望していることは聞いていましたが、こうして実習を通して教え子が保育士になろうと勉強する姿を目の前にすることはうれしい限りです。
Hさんが確か中学生の頃だったと思います。お母さんから「HがS(ダウン症の妹)がいるから家に友達を呼べないと言う」こんなことをSちゃんの個人面談で伺ったことがありました。その時は、Hさんの気持ちよりお母さんの悩み・葛藤を思うと心が痛んだことを思いだします。
実習期間はあっという間に過ぎてしまいましたが、Hさんの子ども達に注ぐ眼差しや声かけには、まだ一年目の学生がこれ程までに完璧にできるものであろうかと目を見張るものがありました。ダウン症の妹を拒否する時期があったHさんがこうして保育士になろうと思ったきっかけが何であったのか。今だからこそ中学生だった頃のHさんの思いが聞けるのではと率直に問いかけてみました。

10歳~15歳の頃のHさんの思い
・3歳頃になったSは、周囲の子どもと顔が違うと思った。それは自分にも分かったし友達にも聞かれた。
・泣いている妹がしゃべらないので気持ちが分からずどうしてあげたら良いのか分からなかった。
・障害があることは分かっていたが何でこんなことも分からないのと思ってしまった。
・中学3年生の夏、学校の宿題で人権作文を書いた。優秀賞を貰うことで自分自身に納得できた。思っていたことを作文を通して始めてお母さんに言えたような気がした。
・保育士になろうと思ったのは、妹がいたことでより経験が生かせるかなと思った。

 当時のことを振り返りながら悩むことなく、満面の笑顔で答えてくれるHさんの存在が、眩しいくらい輝いて見えました。Hさんは、妹のSちゃんとは10歳の年齢差があります。Sちゃんが誕生した時は、Hさん自身がある程度の知識や理解力を身につけていましたので自分がSちゃんの面倒をみなければと強く感じていたように、話の中から伺い知ることができました。障害がある、ないに関わらず兄弟姉妹も子どもでありその家族の一員として一緒に生活しています。子どもにとっては、明確な答えを得られなくても、親が自分のことを真剣に考えてくれていると実感できる体験が必要なのだと思いました。

 兄弟姉妹は、親の知らない所で社会の人の発言や言動への困惑で深く傷つくこともあるでしょう。きょうだいの障害を理由としたいじめ・からかいに傷つくこともあるでしょう。
たとえ兄弟姉妹の気持ちの中に障害への負の感情があったとしても、HさんのSちゃんへの否定的な気持ち「障害がなければいいのに、恥ずかしい、どうして」や率直な疑問「なぜできないのか、手間がかかるのか」についても、きっとお母さんは正面からHさんを受け止め、Hさんの理解力に合わせて伝えてくれたのだと思います。そして、最終手段をHさんに任せていたことも大切なことだったのではないかと思います。

 こうしてHさんが回り巡って障害への肯定的価値を自ら見つけ出す力を養うことに繋がっていけたのは、Sちゃんもお母さんも大切な「家族」だということに気づけたことです。
そして、それを教えてくれたのがSちゃんでありお母さんであったのです。
私は、Hさんの多感な時期の思いを知ることで何よりもまずは周囲の大人、とりわけ親や教師・保育士が子どもの障害を正しく理解していることが大切であり、障害を個人の問題としてとらえるのではなく、社会のありようとの関係でもきちんととらえておくことが大切と思いました。これからの障害児保育を考える上で、+家族支援は私たち保育士の学ぶべき課題であると思います。
最後にHさんとお母様には掲載にあたりご理解いただきました事を心より感謝申し上げます。


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田倉 輝子 先生
(たくら てるこ 先生)
 
森幼児園 主任保育士

【経歴】
・横浜私立 青葉幼稚園
・池田市立 社会福祉施設 やまばと学園
・横浜市 認可保育所 森幼児園
・公益社団法人 神奈川学習障害教育研究協会 会員

障害児保育に携わること30年。
療育センターでの経験を活かし、森幼児園では統合保育を実践されております。



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# by g-asuka | 2014-01-07 11:47 | H25年度(田倉輝子先生)
12月「保育の現場で抱えている問題」
保育の現場で抱えている問題

 年々、落ち着きがなかったり、乱暴だったり、いわゆる「気になる子」「育てにくい子」と言われる子どもたちが増えてきているように感じることがあります。そのような子ども達と日々関わり疲労困憊し、保育に自信が持てなくなっている保育者達も少なくありません。一人の保育者では到底抱えきれない多くの問題を、他職種協働で子どもを支援することが子どもの最善の育ちを保障することと分かりながら、目の前にある他機関に手が届かない現実に集団保育の限界を感じます。

そして、ここにあげる事例はあくまでも一部に過ぎず、抱えている問題は山積みです。

「不安や攻撃性を持つ子ども」
 ひときわ体の大きいA君は3歳児クラスからの入園です。入園当初から席に座って待つことが難しく「シ-ル帳を出して」の簡単な指示にも従うことができませんでした。当初は、環境の変化に戸惑っているのかとも思いましたが、月日が経ってもA君の行動には変化が見られませんでした。一番になることにこだわるA君は、思いが通らないと大声を出したり、保育の邪魔をするようになりました。

 4歳児クラスに進級したA君は、「どれの帽子?」と誰をどれと言ったり「どうして○○なの?」と質問が多くなり、何回答えてあげても同じ質問をしていました。また、片足立ちは「5」まで数える前に足をついてしまったり、積み木を高く積み上げることに苦戦したりする姿が見られました。

 現在のA君は、初めての経験やできそうもないと思うことには、失敗を恐れ参加しようとしません。保育者にスキンシップを求めたり、保育者を独占する様子が見られます。些細なことで友達とトラブルになり、それを制止しようとすると、保育者を蹴ったり叩いたりする姿が見られます。絵本、紙芝居、ビデオは集中して観ることができません。絵本や紙芝居を読もうとすると声を出して邪魔をします。跳び箱、縄跳び等のような体を使うことは熱心に取り組みますが、失敗すると不機嫌になり他児に八つ当たりをしたり、気持ちの立て直しには時間がかかります。

 何事においても自分の思いを優先させ気分のままに部屋を出て行ったり、保育者を試すかのような行動を繰り返したりすることで、ストレスを解消しているように感じられます。教育熱心な家庭で育つA君は、現在ピアノ、スイミング、そして進学塾にも通っています。A君にとって親の過剰な期待に添うことが非常なストレスになっているようにも思えます。親の前では「いい子」を演じようとするA君ですが、頬や太ももにアザを作って登園することがあります。最近のA君は、お母さんの前で常に「いい子」ではいられない状況にあることが推察できます。

 今のありのままのA君の様子を、担任が折に触れお母さんに伝えてきましたが、あまり心配した様子も見られず、専門家に様子を見てもらうといったことができないまま保育をせざるを得ません。

「運動や操作の面で困難さを抱える子ども」
 B君は3歳児クラスからの途中入園です。丁度、お遊戯会の練習の時期に重なり、B君は大きく変わった環境の変化に戸惑っていました。お遊戯会の練習では、両足を揃えて2~3歩ピョンピョンと跳びながら前に出て行くのに勢い余り、決められた場所に止まることができませんでした。室内を移動するときは、爪先立ちで歩く姿が見られました。厚着の傾向があり真っ赤な顔をしている時は、一枚脱ぐように促しますが、がんとして応じてくれないところがありました。

 4歳児になったB君は、生活のリズムが整わず登園が10時を過ぎることもたびたびあり、遊びの中で友達と関わる機会がほとんどありませんでした。偏食が多く、特に野菜にはまったく手をつけず、食べる意欲が見られませんでしたが、保育者のすすめに一口だけ食べようとする姿がありました。排泄、排尿、衣服の着脱は自立し、生活の仕方が分かりできることは自分でしようと頑張る姿が見られました。

 現在のB君の登園時間は入園当初と変わらず、連絡帳には就寝時間は午前2時、起床時間は、午前9時と記されています。相変わらず朝の遊びに参加できることはほとんどありません。言語面においては、保育者の質問に答えることは難しいところがありますが、B君から好きな電車に乗った体験をよく話してくれます。

 絵画、折り紙などは、初めから「無理だよ」と言って手をつけようとしません。粘土は丸めたり、伸ばしたりしますが形あるものを造ることはありません。エジソン箸に頼ってしまうB君に箸を手渡すと、両手で一本ずつ箸を持ち、食べ物を掬おうとします。使い方を教え、なんとか一対の箸を握り練習しています。最近は、箸を握った状態で、小さなものも掴もうと努力する姿が見られます。ハサミを使ってものを切る時には「できないよ」と言って大人に手伝いを求めます。

 未経験なことには、両手の平を顔の横でヒラヒラさせ、どうしたらよいのか分からず慌ててしまっている様子が見て取れます。外遊びでは、周囲の友達について行くことが難しくなり、友達の傍を一人走り回っていたり別の遊びをしていることが多いです。跳び箱、ゴム跳び、なんでも果敢に挑戦しますがなぜかうまくできません。B君の状態を正しく理解し、子ども自身が発達する力を後押しできるために、まずは専門機関へ繋ぎたいところですが、今までの面談では良い結果は得られていません。

「アザの絶えない子ども」
 C子ちゃんは3歳児クラスからの入園です。入園して間もなく担任がC子ちゃんの首筋に傷があることに気が付きました。原因を確かめると「パパがやった」とC子ちゃんは答えてくれました。C子ちゃんは、その後も頻繁に目の下にアザがあったり、後頭部が赤く腫れていたりとアザが絶えない日々でした。

 C子ちゃんは、園生活の中では見られませんでしたが、足の親指を噛む癖があり、皮が剝け痛がることがありました。身辺自立においては、排尿の失敗もなくなり紙オムツから布パンツに変えることをお母さんにすすめてみましたところ、帰宅後に失敗することが多いC子ちゃんが「パパに怒られるのがかわいそう」という理由から紙オムツを外すことができませんでした。この頃のC子ちゃんは早口で話し、どこか体が動いていたりと落ち着きがありませんでした。

 現在のC子ちゃんは、2~3日連続で鎖骨のアザと足のアザを自ら「パパがやった」と見せることがありました。未だにアザが多いC子ちゃんですが、C子ちゃん自身も午睡時に布団に入ろうとして壁や本箱に頭をぶつけたりと、不注意なところが見られます。何よりも以前に増しておしゃべりが多くなり、変わらず早口で落ち着きがありません。

 お母さんとは送迎の際に、C子ちゃんの家での様子を何気なく聞いたりしながらコミュニケ-ションをとっています。そして、再婚相手でありますC子ちゃんの義父の行為は、体罰とまでは言わないまでも、行き過ぎたしつけであると伝えています。又、C子ちゃんのアザについて児童相談所には、報告という形で伝えています。落ち着きのないC子ちゃんについ大声で「じっとしておけ」と言ってしまうお父さんに、C子ちゃんがなぜ落ち着けないのか考えてもらえる機会があればと専門機関の相談を勧めてきましたが、「俺がしつける」というお父さんの同意が得られず、お母さんの決心がなかなかつきません。

 A君、B君のお母さんは、就学期を迎えた自分の子どもについて、同年代の子ども達との育ちの違いを少しずつ感じ始めています。そして、ようやくA君もB君も専門機関に繋がることができました。C子ちゃんは、就学までにはまだ一年ありますが、お母さんは5歳の誕生日を迎えても落ち着かないC子ちゃんのことが気になり、お父さんに内緒で専門機関で診てもらうことにしました。

 専門機関に繋がるまでの2年半、集団保育の場において、担任であります保育者達は、子どもの様子に戸惑ったり、悩んだり、時には、暴れる子どもを抱きかかえながら涙し、配慮を要する子どもの増加によって起きるさまざまな問題を何とかしなければと、子ども達や保護者に向き合おうとしてきました。その努力が報われA君、B君、C子ちゃんは、これから専門家による成長に必要な適切なアドバイスを受けることができるようになります。

 その一方で、行事ごとに成長するわが子の姿を目の当たりにすると、できないことがあってもいつかできると可能性を信じたくなるお母さんの思いがあったこと、辛く悲しい決心をしたお母さんがいたことを、保育者は心に留めておかなければなりません。


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田倉 輝子 先生
(たくら てるこ 先生)
 
森幼児園 主任保育士

【経歴】
・横浜私立 青葉幼稚園
・池田市立 社会福祉施設 やまばと学園
・横浜市 認可保育所 森幼児園
・公益社団法人 神奈川学習障害教育研究協会 会員

障害児保育に携わること30年。
療育センターでの経験を活かし、森幼児園では統合保育を実践されております。


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# by g-asuka | 2013-12-10 09:00 | H25年度(田倉輝子先生)


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